【本物はこの一万倍綺麗だよ】極北の火山島、アイスランドでオーロラを①(旅のきっかけ編)

「残念だったな。私は今、北極だ。」

旅のはじまりの日記帳は、この言葉から始めよう。

『宇宙よりも遠い場所』との出会い

 2018年に放送された『宇宙よりも遠い場所(よりもい)』というアニメがある。女子高生たちが民間南極観測隊に参加して、昭和基地に行く。文字に起こせば、たったそれだけの物語。でも、登場人物たちが「夢」を叶えるため、「人生」と向き合うため一生懸命奔走する様に、多くの人たちの心が動かされた。その物語は、何年経っても色褪せることはない。そう断言できる。

 そして、物語の最後には、南極とは真逆の場所、「北極」が登場する。なぜかって? それは、アニメを見てのお楽しみ。でも、ひとつだけ言えるのは、その最後の風景を見たくて、私は北極行きを決めたのだ。

初めてのアラスカ旅行

 アニメ放送から2年が経った2020年2月20日。私は、アラスカの空の下にいた。空に輝く、オーロラとともに。
 オーロラとは、光のカーテンとも呼ばれる、太陽風と地磁気が織りなす発光現象。ゆらゆらと揺らめく緑や赤の芸術作品が、空いっぱいに横切っていた。そして、二度と同じ形は現れない。

 その空の下、「すっげぇ!」なんて言いながら、私はずっと飛び跳ねていた。あんなに無邪気にはしゃいだのは、きっと小学生以来だ。

人生が変わる旅

 「オーロラを見れば人生が変わる」なんて言う人もいるけれど、そんな都合の良い話はない。アラスカから帰国した私は、いつも通り職場のパソコンに向かい、いつも通り上司に施策のお伺いをたて、いつも通り関係部署と調整をする。どんなに綺麗な写真を撮っても、それは旅の思い出に過ぎない。少しだけ雑談に花を添えるツールになるだけだ。私の日常生活に、何も変化は起きなかった。

 でも、忘れられないのだ。5年も前のあの日のことを、今でも手に取るように思い出せる。そして、時々無性に欲してしまう。何度でも、「あの場所に立ってみたい」と。

変わってしまった人生

 私は『よりもい』のお陰で「旅」の魅力を知った。旅への原動力は、よりもいのおかげで湧いてくる。間違った言葉を使うなら、私は『よりもい』に人生を狂わされた。私の人生は、「旅」がその中心にある。布団とこたつが大好きで、人見知りでインドア派で、引っ込み思案の私は、今はもう見る影もない。『よりもい』に背中を押して貰ってから、私の人生は夢を叶えるためだけにある。そんなアニメには、そう何度も出会えない。

 アラスカのオーロラは、私の旅の集大成であり、私の旅の出発点。オーロラを見て、人生は変わらないのか。いいや、違う。やっぱり、私の人生は変わったのだ。作中のラストで描かれたあの風景は、私の心を捕らえたまま、今も離してくれやしない。毎年ずっと、北極再訪のチャンスを伺い続けた。

再び、北極へ。

そして2025年。ついに私は、北極行きを決意した。
だって、2024年から2025年に跨がる2年間は、11年に一度しか訪れない「オーロラの当たり年」なのだから。
目的地は既に決めている。極北の火山島『アイスランド』だ。

(次回の更新は2025年1月19日を予定しています)


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